部屋に戻ると、〝忘れ物〟を取る。
未だにバタバタとうるさい廊下を静かに歩く。
ノアはそんな忙しい彼らをじっと見つめる。
「…ノア、私についてくるの?」
私に向き直り、鳴くこともなく頬に柔らかい頭を擦り寄せた。
フッと笑って、門を出た。
「門限までに帰らなきゃ怒られるな」
ボソリと呟くと、外套もせずに街を歩く。
町行く人はそれを見て釘付けになったり、ヒソヒソと話している。
そういえば懐かしい。
梅姉さんはこんなこと気にする人ではなくて、堂々と歩いていた。
目立つのは好きじゃない。
この髪が注目されるのは鬱陶しい。
でも今は清々しい。
梅姉さんは私に〝1人じゃない〟と言った。
本当にそうだった。
勝手に私が諦めていただけで、みんな私を心配してくれていた。
だったら私は……。