立ち上がるために立膝を立てると同時に、腕が掴まれる。
無言でトシを見る。
「……お前は休暇中だ。
探しに行く義理は無い」
真剣な顔にフッと笑いかける。
「だから、〝休暇〟に戻る。
何を心配してるのかは知らないけど、そこまでお人好しじゃない」
私の言葉に安堵した様子で、腕を離した。
私も立ち上がり、部屋を出ようとした。
「待て」
障子に掛けた手を止め、顔だけ振り向く。
トシは眉を寄せて、私を睨みつけるような目だった。
「お前のことも連中は探している。
一応伝えておくが…。
いいか、妙な気は起こすなよ」
念を押す彼に私はもう一度微笑んで部屋を出た。
彼女は自分でその結果を招いた。
そして私も自分でその結果を招いた1人。