拾われた猫。Ⅱ




「…何もねぇっつってんだろうが」

「……」

「なんて顔してんだ」



無言で顔をしかめる私の頬を軽く引っ張るトシ。



屯所の騒がしさの理由を聞くと、「何でもねぇ」の一点張りだ。




私も半年ここに居座っている。



騒ぎが尋常じゃないことくらい分かる。




「…ったく。

お前は休暇中だ。

自分の部屋で休んでろ」

「私の休暇はいつ終わるの?」

「…さぁな」



誤魔化すような撫で方が余計に気に入らなかった。


更に眉間の皺を深めたその時だった。




障子が開いたと同時に声が発された。




「土方さん!

やっぱ菊さんどこにも居ねぇよ!!」



大きな瞳は私を映して、後悔の表情を浮かべた。


その後にトシを見て、顔を青ざめさせた。



大きな溜め息につられるようにトシを見ると、頭を抱えていた。