「…何もねぇっつってんだろうが」
「……」
「なんて顔してんだ」
無言で顔をしかめる私の頬を軽く引っ張るトシ。
屯所の騒がしさの理由を聞くと、「何でもねぇ」の一点張りだ。
私も半年ここに居座っている。
騒ぎが尋常じゃないことくらい分かる。
「…ったく。
お前は休暇中だ。
自分の部屋で休んでろ」
「私の休暇はいつ終わるの?」
「…さぁな」
誤魔化すような撫で方が余計に気に入らなかった。
更に眉間の皺を深めたその時だった。
障子が開いたと同時に声が発された。
「土方さん!
やっぱ菊さんどこにも居ねぇよ!!」
大きな瞳は私を映して、後悔の表情を浮かべた。
その後にトシを見て、顔を青ざめさせた。
大きな溜め息につられるようにトシを見ると、頭を抱えていた。

