「俺はお前がいつかは帰るんだと思ってた」
ふとそんな話をするので、キョトンとしていた。
そんな私をフッと笑って、庭に視線を向ける。
何を見るでも無く、ただボーッと寂しげに笑った。
「だから…、いや、言い訳か」
置いてけぼりの私は首を傾げるしか出来ない。
「お前は今、ここに居たいと思うか?
……俺に元の世界に帰りたいと思うお前を引き止める権利は無ぇよ。
だけどな、元の世界よりここを選んで欲しい。
……今はそれだけでいい」
瞳は私の目を真っ直ぐ見て離さない。
───『お前は要らない』
───『貴方は……、要らないのよ』
あぁ……、私は浅はかだ。
私は誰かに、引き止められたかったんだ。
翔の事を知りながらも、何も聞けなかったのはきっと…また〝要らない〟と言われることを恐れたから。
佐之の言葉が心のもやもやを晴らしてゆく。
自分の答えを否定される可能性しか信じてなかった。

