拾われた猫。Ⅱ




「俺はお前がいつかは帰るんだと思ってた」



ふとそんな話をするので、キョトンとしていた。



そんな私をフッと笑って、庭に視線を向ける。



何を見るでも無く、ただボーッと寂しげに笑った。



「だから…、いや、言い訳か」



置いてけぼりの私は首を傾げるしか出来ない。



「お前は今、ここに居たいと思うか?

……俺に元の世界に帰りたいと思うお前を引き止める権利は無ぇよ。

だけどな、元の世界よりここを選んで欲しい。

……今はそれだけでいい」




瞳は私の目を真っ直ぐ見て離さない。



───『お前は要らない』

───『貴方は……、要らないのよ』




あぁ……、私は浅はかだ。


私は誰かに、引き止められたかったんだ。



翔の事を知りながらも、何も聞けなかったのはきっと…また〝要らない〟と言われることを恐れたから。



佐之の言葉が心のもやもやを晴らしてゆく。



自分の答えを否定される可能性しか信じてなかった。