拾われた猫。Ⅱ




めぼしい情報は無く、しばらくすると自分たちの仕事に戻っていった。



トシが部屋を出ようとしたその時、くるりと振り返って私を見た。



その行動の真意が分からず、キョトンとしている私。



トシは「ごほんっ」と咳払いをして、斜め下に視線を下ろした。



「…仕事中じゃなければ、〝俺〟じゃなくてもいい」



「どういう意味?」、そう聞きたかったのに足早に去って行ってしまった。



訳が分からず、あんぐりと口を開けていると、勇はトシが去って行った方を見ながら笑っていた。



「トシは不器用だからな。

仕事の時以外は肩肘張らずに女子に戻れと言うことだよ」


ポンッと頭を撫でてから、トシの後を追うように去っていった。




咳払いをした時のトシの顔を思い出し、笑いが込み上げてくる。




「雨ちゃん」



ふと名前を呼ばれて顔を上げると、総司の顔が近くにあった。



驚いて目を見開いていると、額に温かく柔らかいものが当たった。



「…え…」



頭をフル回転させることで、それが総司の唇だったという事に気づく。