張り詰める空気の中、先陣を切ったのはやはり凛と響くトシの声だった。
「無駄話はもういい。
……香月、お前を連れて帰ってきたのは外套を着た男だった。
身長は175程度で、やたら腕が立つ。
お前の事を知っているようだった」
切れ長の両目が私を見る。
トシだけではなく、その場の全員の目が私に向いていた。
私はしばらく黙っていた。
瞼を閉じて、意識を閉ざされる前の記憶を辿る。
軽い足取りでいつの間にか敵の間合いに入る。
あんな芸当が出来る人は1人しか知らない。
でも……そんなはずは無い。
瞼を開いて、トシの目を真っ直ぐに見る。
「俺もその人に負けたけど、……何も分からない」
キッパリと言い切る私の言葉を信じたのか、深い溜め息をついた。
新八が言っていた『土方さんが欲しい情報』とやらは、例の外套の男の事なんだろう。
……きっと私の気の所為。
視線を下に下ろしながら、心に言い聞かせた。

