拾われた猫。Ⅱ




張り詰める空気の中、先陣を切ったのはやはり凛と響くトシの声だった。




「無駄話はもういい。

……香月、お前を連れて帰ってきたのは外套を着た男だった。

身長は175程度で、やたら腕が立つ。

お前の事を知っているようだった」




切れ長の両目が私を見る。



トシだけではなく、その場の全員の目が私に向いていた。



私はしばらく黙っていた。



瞼を閉じて、意識を閉ざされる前の記憶を辿る。



軽い足取りでいつの間にか敵の間合いに入る。



あんな芸当が出来る人は1人しか知らない。



でも……そんなはずは無い。




瞼を開いて、トシの目を真っ直ぐに見る。



「俺もその人に負けたけど、……何も分からない」



キッパリと言い切る私の言葉を信じたのか、深い溜め息をついた。



新八が言っていた『土方さんが欲しい情報』とやらは、例の外套の男の事なんだろう。



……きっと私の気の所為。



視線を下に下ろしながら、心に言い聞かせた。