「彼が言っていた『愛されるべきして愛された人間』とはどういう意味でしょうか?」




山南敬助は真剣な面持ちに変え、顎に手を当てる。



「そもそも、あの男が香月にとってどういう存在なのかが分からねぇ。

その言葉を考えるのは後回しだ」



土方歳三の言葉に顎の手を外し、首を縦に振った。



それから土方歳三は腰を上げて、倒れている彼女に近づく。



「私が部屋まで運びましょう」



ニコリと笑って、彼女を横抱きにする山南敬助に目を見開く。




「貴方も彼女の容態が気になっているのでしょう?」



その笑顔には何もかも見透かされているらしかった。



土方歳三は眉を下げてフッと笑い、「頼む」と言って、部屋を出た。




その足に少しの焦燥感を帯びていた。