「どうして、どうしてあの子が愛されるの?!!

左之助様と出会ったのは私の方が早かった!

好きになったのだって……!!」




落ち着かせるために、土方歳三は彼女を自分の部屋に運んだ。



けれど、彼は頭を抱えていた。



菊は落ち着くどころか、彼女のヒステリーは留まるところを知らない。



机に頬杖をつき、体重を預ける。


菊の声は高くて、彼の耳を刺激する。



耳を塞ぎたい衝動を堪え、彼女の方を向きながらも瞼を伏せていた。




「私は王家の血筋なのよ!

それなのに、それなのに!

うっ……!」




小さな呻きと共に菊の体はバタリと倒れ込んだ。



土方歳三は菊の後ろの男を片目だけ開けて見ると、溜め息をついた。




「顔に似合わず手荒だな、山南さん」



土方歳三の呆れた物言いに、手刀をしまいながらクスリと笑う。



「もう夜も遅いですから、叫ばれると困るのですよ」



穏やかな口調で綺麗に笑う彼の腹の中は誰にも読めない。