その後すぐに菊さんに呼ばれて、再び町に出た。
梅姉さんと歩いた時のような雰囲気では無かった。
会話もなく、どこに向かっているのか分からないまま誘われて出てきてしまった。
もう随分歩き、オレンジの光も少なくなった。
いつの間にか、暗く人通りのない道に来ていた。
そこで菊さんが立ち止まった。
「私ね、欲しいものは何でも手に入れてきたわ。
私が言えば、大体のものは皆が用意してくれる」
俯きながら私の前に移動した。
そして片手を取られた。
ゆっくり上げられる菊さんの顔に魅入っていた。
この人は…なんて綺麗に冷たく笑うんだろう。
そういうことに疎い私でもよく分かる。
この人の親は育て方を間違えたんだと。

