「はぁ…」と溜め息をついた。



まるで、自分は帰りたくないみたいじゃない…。




いや、『みたい』じゃない。


『帰りたくない』んだ。




このことを皆が知ったらどうするだろう。



私が帰れるように協力してくれる。



……もしかしたら、引き留めてくれるかもしれない。



フッと自嘲気味に笑って、前髪を外套ごとくしゃりと掴んだ。



浅ましい。




「あーめ、百面相してるぞ」



グニッと頬をつままれた。



「ひぇーふけ」

「フハッ!

今俺の名前呼んだ?」



頬から手を離して、今度は撫でてくれるけど、本人は笑いが止まらないらしい。



「悪ぃ悪ぃ」



笑いが止まったのか、眉を下げて苦笑した。