拾われた猫。Ⅱ

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刀を剥き出しにした男は、スローモーションのように屋敷の方に吹っ飛びながら倒れていく。


何が起きたのか理解出来ていない周りは開いた口が塞がらない様子。


正直私も無我夢中で、一瞬記憶が吹っ飛んでる。


とりあえず分かっているのは、縛られた勇の首目掛けて刀が振られているのを見て、体が勝手に動いた。

どうやって行ったのか分からないけど、気づいたら、勇と処刑人の間で地面に足が着く前に蹴り飛ばしていた。


一葉達に捕まる前にここに辿り着けて良かったけど、倒れた男の右腕には私の物ではないクナイが刺さっている。


辺りをキョロキョロ見渡す。


どこにも気配は無いけど、遠距離でここまで正確に利き手を狙える技術。

こんなことが出来るのは、私の知る限り一人しかいない。



「……香月くん…?」


素っ頓狂な声で私を呼ぶ彼に振り返り、微笑んでみせる。


「…今度はちゃんと間に合った」


雑巾のような服。

蚯蚓脹れどころではない傷だらけの体。

腸が煮えくり返っているけど、何はともあれ喜びで胸が震える。