男の目は彼女を睨みつけながらも、不敵に笑っていたのだ。
男の感情を悟ったのか否か、今度は血走った目を向けた。
その表情のまま、男は声を張り上げる。
「なぜ、〝香月雨〟という少女にそれほどまで執着しておられるのかは存じませんが、彼女はどうやら貴女方にはお会いしたくないように感じられる」
これほどまでに傷ついた体はぼろ雑巾のようだった。
絶体絶命な彼は命乞いをする方がよっぽど正気だと感じられるだろう。
彼女を含め、重鎮ぞろいのこの場で男の気力は毛程も削がれていなかった。
真っ青になった腕は鎖を解かれ、刀を目の前に置かれたとして、満足に振れるのか。
肉が何度も削られ、盛り上がっては傷つけられた体は満足に動けるのか。
ここに居る誰もが冷や汗を垂らしながら、考えたはずだった。
「…つまりは悪あがきということだな?」
動揺を霞のように滲ませながらも、鋭い目を離さない女。

