拾われた猫。Ⅱ

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ぽつりぽつりと降り出す雨。


濡れて温度を失っていく地面には粗末な麻の絨毯が小さく存在する。


傷だらけの男は鎖に繋がれた両腕を支えられながら、千鳥足のように進む。


俯きながらもようやく絨毯の上に正座する。


縁側に佇む女は短い黒髪を人差し指で弄っている。



「新撰組局長、近藤勇。

最後にもう一度聞く」


つまらなさそうにそっぽを向いていた瞳が男を映すと、口角をそっと上げた。


「赤髪の少女、〝香月雨〟の居場所は?」



女よりも奥の畳に鎮座する綺麗な着物の男達は、傷だらけの男を強く睨めつける。


俯く傷だらけの男は尚も語りはしない。


女は大きく息を吸い込んで吐く。



「どうなんだと聞いている」


強い口調の彼女は男の目前に立ち、腕組みをする。


やがて、微動だにしない男に痺れを切らし、男の前髪を握り、自分の方を向かせた。



「まだ聞く耳はあるはずなんだがな」


満足気に笑う彼女は、男の表情に大きく目を見開いた。