「私も赤木からそんな報告は受けていません…」
ぽつりぽつりと雨が降り始める。
赤木は側近としてはとても有能だった。
そんな大事な報告を忘れるわけが無い。
何かがおかしい…。
「それと…」
神妙な面持ちで結は私を真っ直ぐ見る。
「赤木が一度香月雨を捕らえた時、牢に入れるように指示したそうです。
何者かによって阻まれ、逃げられたようですが…」
何者か。
一番に頭をよぎるのは、さっきの少年の顔。
彼女に〝香月雨〟という少女を探すように指示したのは私。
でも連れてくるようには言ったものの、牢に入れるようにとは言ってない。
探すように言ったけど、力や出生について知っているのは私と結くらいで、彼女には何一つ話していない。
それにしても牢に入れるのは、彼女を知る者からすれば、何かを急いでいるようにも思う。
新撰組局長の処刑といい、彼女を牢に入れようとしたことといい、やっぱり引っかかる。
「結、処刑場に向かいましょう」
強い声で放った私に強く頷き、準備を始めてくれた。

