拾われた猫。Ⅱ




「んー、その理論だと今貴女に出来るのは、赤木さん止めることくらいっすね」



音も無かった。


窓枠に足を掛け、上を片手で掴んでいた。


ここは上階であるにも関わらず、その少年は物ともせず、私をにっこりと見ていた。



動けない私はただただ、その少年に目を見開いていた。



「もしもーし。

俺、ここまで来るの一応大変だったんすけど」


呆れ顔の彼。


動けない私は固く警戒するしかない。


それを彼はまた不思議そうに見ていた。



「それだけ警戒するってことは、聞こえてるんすよね?

妹様がいらっしゃらない時間って少ないんで、単刀直入でいいっすか?」


表情や声音とは裏腹に、彼はどこか急いでいるようだった。



「新撰組の局長さんの首が取られるの、今日なんすよ。

一葉さんはどうか知らないすけど、俺にとっても不本意なんすよ」



顔は微笑んでいるのに、彼の言葉や目は冷たく凍てついた。


そして、最後の一言に私は冷静でいられなくなる。


「もちろん、雨さんにとっても」