「一葉さん。
まさかとは思いますけど」
「そのまさかだけど?」
少年の方を向く事無く冷ややかに答えを返す。
「まじっすか…」と少年は片手を額に当て、引き攣った顔を向ける。
「誰がここまで連れてきてやったと思ってんの」
「はーい、やりまーす」
冷や汗を垂らしながらニッコリと笑い、素早く片手を綺麗に真上に上げた。
少年は望遠鏡を渡しながら、「ん?」と首を傾げる。
「そういや、美華さんはどうしてるんすか?」
「雨があの中にいるんだ」
「あー…、そゆことっすか」
ゆっくりと何回か首を上下に動かす少年。
「一葉さんはどうするんすか?」
屈伸しながら、外套の男に尋ねる。
「俺はお前の仕事の尻拭いでもしてくる」
「うへぇ…、辛辣っ。
…赤木の執務室は女王様とその妹様の部屋に結構近いっすよ?
それに、俺には禁書庫がどこにあるのかは分かんなかったっす」
横目で外套の男を見ながら、今度は膝を伸ばす。
外套の男は少し上を向き、考える様子を見せるが、「何とかなるだろ」と口角を上げた。

