拾われた猫。Ⅱ



「一葉さん。

まさかとは思いますけど」

「そのまさかだけど?」


少年の方を向く事無く冷ややかに答えを返す。


「まじっすか…」と少年は片手を額に当て、引き攣った顔を向ける。


「誰がここまで連れてきてやったと思ってんの」

「はーい、やりまーす」


冷や汗を垂らしながらニッコリと笑い、素早く片手を綺麗に真上に上げた。


少年は望遠鏡を渡しながら、「ん?」と首を傾げる。


「そういや、美華さんはどうしてるんすか?」

「雨があの中にいるんだ」

「あー…、そゆことっすか」


ゆっくりと何回か首を上下に動かす少年。


「一葉さんはどうするんすか?」


屈伸しながら、外套の男に尋ねる。


「俺はお前の仕事の尻拭いでもしてくる」

「うへぇ…、辛辣っ。

…赤木の執務室は女王様とその妹様の部屋に結構近いっすよ?

それに、俺には禁書庫がどこにあるのかは分かんなかったっす」


横目で外套の男を見ながら、今度は膝を伸ばす。


外套の男は少し上を向き、考える様子を見せるが、「何とかなるだろ」と口角を上げた。