「行くぞ」


スタスタと歩く彼に、慌てて小走りで追いかける少年の頭には、?が浮かんでいた。


「行くってどこに?

雨さんのとこっすか?」

「決まってんだろ」


当たり前のように言う彼に、少年は目を丸くする。


少年の記憶の中では、仕事において彼がそこまで優しいという覚えがなかったのだ。



「一緒に探してくれるんすか?!」

「…何そんなに驚いてんの?」


首だけ振り向いて、じとっとした目を向ける彼に、ポカンと口を開く。



「俺はてっきりもっと辛辣な言葉が飛んでくるのかと思ってました…」

「お前の中での俺はどんなのなんかね」


軽い殺気を感じて、言葉を飲み込む少年。


迷いの無い彼の足取りには、少女がどこに行ったのか、分かっているらしかった。



「急ぐぞ」

「分かってるっす。

お姫様をお迎えに行かなきゃ」


にっこりとした口元に似合わず、弧を描いた冷たい瞳は、「なんちって」と冗談交じりの言葉を落とした。