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「ありゃー、行っちゃったかー」


自ら頭を乱暴に撫でる少年の言葉とは裏腹な表情。



「行っちゃったかじゃねぇよ。

何やってんの、お前」


気だるそうに後ろから現れた外套の男。

苦笑を浮かべる少年の前に立つと、頭を思い切り掴んだ。



「いだだだだだだっ!!!!」


涙目の情けない顔を見て、ため息をついて乱暴に手を離す。


「…痛いっすよ〜。

でもそんな乱暴な所も愛情の裏返しっすよね!」


わざとらしく涙を拭き、嬉しそうに両手で握りこぶしを作った少年。

該当の男は背を向けたかと思えば、そのまま瓦礫を少年に向けて投げる。



「ひぃっ!」と情けない声と一緒に、間一髪で避けた。



「俺はあいつを連れて来いって言ったんだけど?」

「いや〜、連れてきたんすけど、貴方が来るのが遅くてどっか行っちゃいましたよ」

「…もう一発行くか?」

「すんません…」


該当の男の表情は見えないまでも、殺気を感知し、素早く頭を下げた。

それでもぶつぶつと文句を垂れる彼は、外套が揺れるだけで、ピタリと文句をやめる。



「まぁ…いいか」


ぽつりと零れた言葉に少年は首を捻る。