永倉新八が千鳥足で自室へ帰ったあと、また縁側に出て、夜空を眺めていた。 「…満月じゃねぇな」 少しの思い出ともどかしい気持ちが、酒を口に運ばせる。 ──…帰らないよ 以前彼女が言った言葉を、頭の中で反芻する。 彼は自分の手を見つめた。 「細ぇよな…あいつ。 強いくせに」 クスリと笑って、また酒を煽る。 早く会いたい…。 彼の中を占めるのは今はこの思いだけであった。 〝帰らない〟。 ただそれだけの口約束が、彼の心を支えていた。