「巡回が終わったのか?」
職務をする手を止めて、総司を見た。
手を頭の後ろに組み、「いつも通りだったよ」とニコッと笑う。
それを聞くだけ聞くと、また職務に戻るトシ。
総司はその場に座ると、また咳をし始める。
「まだ風邪か?」
「えぇ」
「早く治せ」
何も知らなければ、ただの風邪にしか見えない。
昨日のように血を吐いていない事に少し安心する。
総司は私とバチッと目を合わせる。
「そんなに心配しなくても、すぐ治るよ」
優しい微笑み。
それが今は悲しかった。
私ではどうすることも出来ない。
事実はそうだとしても、『何とかする』と約束した。
……もう、誰かが居なくなるのは嫌だ。

