「…月、か」
「どうかしたか?」
クイッと喉に流しながら横目で私を見る左之。
「私の世界には、〝I love you〟って言葉があるんだけど、その訳は〝貴方を愛しています〟ってことなんだけどさ」
お酒を注いだ後、飲むことも忘れて私の話をじっと聞いてくれる左之に、もう一度クスリと笑った。
私は月を見上げる。
「とある偉人が、この国の人間はそんな事言わないって言って、〝月が綺麗ですね〟って訳した。
…その言葉がとても綺麗って感じたの覚えてる」
夜を輝く月は、朝には輝きを失ってしまう。
でも変わらずそこにある。
それが月の綺麗なところだと思う。
「〝月が綺麗ですね〟…か。
俺は敬語なんか似合わねぇから、〝月が綺麗だな〟って言うかもな」
ククッと喉を鳴らす彼に、「何それ」と笑って返した。
「誰か、その言葉を言いたい奴がいるのか?」
突然の質問に戸惑う。
それは総司からの質問と同じだったから。
「…分かんない」

