僕達はオレンジ色と変わってしまった帰り道を歩いていた。

あまり口数が多い方ではない僕。

今日、一日だけでこんなにも話した。

そんな小さなことが、少し幸せに感じた。

また明日も、話せるだろうか。彼女と。

そんな事を思っている僕が居ることは確かだ。

しかし、そんな感情を否定し、消そうとしている僕もいる。

自分の事だが、何もかも分からなくなった。

僕は空を見上げると、空はオレンジ色の晴天だった。

電柱に止まるカラス。家の前で立ち話をしているおばさん達。

エナメルバックを持ってヘルメットをかぶって帰っている中学生。

花屋さんに新しく入荷された花々。

そんな何でもない風景が広がる。

別に特別なことなんて何もないはずだ。

それなのに、こんなにも綺麗に見えるのはなぜだろうか。

「綺麗だね。」
と彼女は、目を細め少し微笑んでいた。

その横顔も綺麗だと思ったが、口には出さなかった。

そのかわり、僕は彼女の言葉に笑顔で頷いた。

そこで、僕はふと気づく。

どうでもいいことではあるけれど、今僕は自然に笑っていた。

こんなふうに笑うことは僕の記憶の中になかった。

隣の彼女は僕の笑顔を見て、さらに喜んだ。

「ツッキー笑顔!今日はとってもいい日だ。」

「僕の笑顔にそんな効力はないよ。」

こんなどうでもいいような会話を、僕はずっと続けていたいと思った。