どのくらいの間、僕達はそうしていただろうか。

静かな時間が、流れた。

「…ねぇ?どうしたの?」
と彼女が不思議そうに聞いてきた。

僕はやっと腕の力を緩めることが出来た。

彼女の顔を見る。彼女はまだ不思議そうな顔をしていた。

僕はそんな彼女に、少し無理矢理な笑顔で笑ってみせた。

「…いきなりごめん。」

それだけ言って、僕は彼女から離れていった。



「ねぇねぇ、ツッキー!今日どこか行かない?」
と他のクラスの女の子から、誘われた。

「ごめん、今日予定があって…」

今はそんな気分じゃない。

「そっかー、残念!じゃあまた今度。」
とそれだけ言って、女の子達は帰ってしまった。

「はぁー、今日ツッキーは予定があるのかぁ。
付き合って欲しかったのになぁ。」
と僕の隣で残念がり、ため息をついている彼女。

「あーあー、それじゃあ他当たるしかないなぁー。」
とわざと大きな声で言っている。

先ほどの事もあり、彼女とは余り顔を合わせたくない。

「何?僕に何か用?」

言葉にさえ、苛立ちが表れ始めた。僕は短気だろうか。

「いやー、予定があるなら、仕方ないよね。」
とわざとらしい態度で更に苛立った。

「じゃあ、僕は帰る。」

そう言って席を立った。

「…待って!」

彼女からは聞いたことがないくらいの大声で、僕は驚いてしまった。

振り向くと、少し悲しい目をした彼女が悲しそうに僕を見ている。

「待って…待って。」

そう繰り返す彼女。見ているだけで胸が締め付けられた。

僕は彼女をそっと包み込んだ。

「大丈夫だよ。僕は、ここにいる。」

その言葉を聞いてか、彼女も少し落ち着いたようだった。