「んー…もう朝か…」
いつもと何も変わらない朝。
縁側から入ってきた日差しで目を覚ました。

まだ、朝の6時前なのに目が覚める。
もう少し寝てみたいとも思うが、
これは俺の小さい頃からの習慣だから変えるのは難しい。

俺がこんなにもはやく起きるのは、委員会に入っているからではなく、ただ家の手伝いをするためである。
俺の家は、まぁ普通とは違う。

俺の家がなにをしているかは、もうすぐ分かることだ。


「お〜い!宗介!」
父の間延びした声が聞こえてくる。
「今、行く〜」
それだけ伝えると、俺は父のいる居間へと向かった。

「おっ!宗介、起きたか」
「おはよう。父さん」
俺の父、橘源治。俺は父と2人でこの寺で暮らしている。
母は身体が弱かったらしく、俺を産んですぐに亡くなったらしい。

毎日、仏様に手を合わせるのが起きて最初にすること。
今のでわかったかもしれないが、そう俺の家は代々、寺の住職をしている家だ。

朝飯を食べながら、いつも通りの会話をする。
「おい、宗介。食い終わったら寺の中を掃除しておけよ」
いつもと同じセリフ。
「うん。いつも言われてるからわかってるよ」
これが俺と父の毎日の会話。
俺は登校する前に、寺の中を掃除しておく。
仏様がいるのだから、手抜きは絶対するな。
というのが父の小さい頃からの教えだ。

「もう時間だから、用意して学校に行くか」
小さい頃と比べると朝の掃除も時間通りに終わるようになってきた。
俺は着替えてから母の仏壇に「いってきます」と手を合わせ、家を出た。

いつもの道を歩く。
そうすると、いつものように小さい男の子が俺に話しかけてきた。
でも、それは普通の人には見えない。
いわゆる幽霊というやつだ。
幽霊が他の人には見えないということを知ったのは、小学3年生のことだった。

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「おい、お前いつも誰と話してんだよ!気持ちわりー!」
そんなことを言われても、
俺は全く何のことかわからないでいた。
「だって、ここに人がいるじゃん」
他の人には見えないということを
知らなかった俺は不思議に思って
そんなことを口にした。
そうするといつも
「お前は化け物だ!」
と言われてしまっていた。
それを理解出来てからは、他の人と同じように過ごしている。


話を戻そう。
まぁ、話しかけられるのはいつものことだし気にしてもいない。
けど、いつもと違っていたのはある交差点で
「あれ〜?お兄さん、もしかして私のこと見えてる〜?」
女子高生ぐらいの女の子が話しかけてきたことだった。
なんだ?
「何ですか?俺、急いでるんですけど」
そう答えると、周りの視線が奇妙なものを見る目に変わった。
また、やってしまったらしい。
この子は幽霊だったってことか…。
「やっぱり見えてんじゃん!」
そう幽霊の子は話しかけてきたけど、これ以上周りに変な人だと思われたくないので無視する。