君が笑う理由になりたい


ゲームセンターで、ほぼ一方的に神谷くんを連れ回した。

神谷くんは、見てるだけ。

だけど、クレーンゲームをひとつだけやってくれた。

最近流行ってる、死神のマスコット。

その死神の大きな縫いぐるみを800円使って取ることに成功したのだ。

そしてその縫いぐるみを私にくれた。
だけど、少し邪魔なので神谷くんに持ってもらう。

また、いい景品がないかと探し歩く。

横目で神谷くんを見ると真剣な目つきでスマホを見つめていた。

時々、真剣な目でスマホを見るの。

何だろう、と思って覗こうとするが隠される。


「ごめん、俺もう行かないと」

「あ、うん。ありがとね」


それに、どんな意味があるのか分からないけど手をふって、私1人が残された。


私1人で、店の中を回るけれど、神谷くんがいないと、なにも光輝くものがない。


先程遊んだ、死神のマスコットが景品のクレーンゲームまで来た時。

あっ、と思い出す。
神谷くんが、縫いぐるみを持っている。

まだ全然話したことのなかった神谷くんの連絡先も知るわけもなく、ただ放浪するように神谷くんを探した。

今思えば、神谷くんのこと全然知らない…

私が一方的に話しては何も聞いてないし神谷くんが言ってもない。


背が高いから、すぐ見つかる。
そう思ったが、期待外れに見つけることが出来なかった。


世の中、漫画みたいになるわけないか。

そう、諦めかけた時。


商店街の路地裏から、ヒューと不気味な風か吹いて髪の毛が微かに揺れる。

まだ明るいのに、路地裏の向こうは暗くて不気味。

心臓がドクドクして怖いけれど、好奇心に負けて体が自然と路地裏へと進む。

もう、犯罪とか起こりそうな場所で自分は何やってるんだろう、そう馬鹿馬鹿しく思えて、戻ろうとした時。


ドサ。
なにか重いけれど、柔らかいものが倒れる音がする。

音がした方へ進むと、外傷は無いけれど倒れている男の人と、私と同じ制服を着た男の人が立っていた。

見つからないように、室外機の陰に隠れて身を潜める。

一回立ち止まると、もう震えが止まらなくて足も動かない。
しかし、ううう、と声は出そうで息も聞こえないかと、口を抑える。

何時もはすぐに終わるはずの時間は、進まない。


1人、足音がして体が強張る。

すっと、通り過ぎたのは、紛れもない神谷くんだった。


ピロロロ。

あああ。運が悪すぎる。
スマホの着信を切っとけば良かった。

神谷くんは、見ない訳はなくてこちらを見る。

その顔は、一瞬何かこの世のものではないものが見えた気がしたが、改めて見るとなにもない。


「ご、ごめん…。あの人って…」

「ああ、迂闊だった」


そういったあとに、着信音はブチっと切れた。