授業が終わり、周りの皆が帰って行くのを見ながら居残りをさせられていた。

数学のうるさい先生が、提出物を出していない生徒を残らせ、終わるまで返さない地獄。


運動は得意だけど、勉強は苦手だ。

少しやってすっぽかした為、学年で1番提出率が低い。


「あと、お前らだけだぞ」


暗い教室に蛍光灯の明かりで照らされる生徒は、私と神谷くんだけ。


「神谷くんが居残りって意外」

「そうか?」


私は、シャーペンを持たずに先生や神谷くんに話しかける。

時々先生に叱られる事もあるが怖くない。

私のくだらない話し声と、カリカリとシャーペンを滑らす音、時計の音。

そして、神谷くんの声も加わった。


「先生、終わりました」

「ええええ、早い。
神谷くん、待ってよお。帰らないで」


そうお願いするが、神谷くんは無視し教室から去って行った。

いよいよ、残るは私だけで寂しい。


こんな時間になってから、やっとやる気が起きてこの教室から解放された。

廊下の窓から見える外は雲のせいか、そういう時間帯なのか、暗くて雨が降っていた。


「遅い」

「えっ、えええええ!なんで?」

「片桐さんが待てと行ったからだろ。
帰ってほしかったのか?」


神谷くんは、またスマホを片手に持ってそういった。

さっきまで、スマホを触っていたのだろう。


「で、神谷くんは傘持ってる?」

「持ってるが、入れてやらないぞ」

「風邪引いちゃうから入れてよ。
私、傘は今日持ってないの」


そこらの忘れられた傘を借りるのは罪悪感があるし、最善策はやっぱり目の前にいる神谷くんの傘にいれてもらうこと。

お願い、と何度も言っても入れてやらない。という。

神谷くんの性格、少し意地悪なことが発覚

顔からして、ドSな感じはするかも。


「しょうがないか。私、走って帰る
ばいばい、また明日。」


目に雨が入らないように、手で雨を防ぎながら少し走ると、神谷くんがいきなり入れてあげると言い出した。

ちゃっかりと、神谷くんの傘に入る。


相合傘。男の子とのは、幼稚園の頃からやっていない。

神谷くんの広い肩幅に、女子高校生にしては身長が低すぎて小さい私で、傘はピッタリだった。

近すぎる距離に少し緊張するけど、全然話したことのない神谷くんだからまだいい。