「……なに?さっきからジロジロと」

「神谷くんって笑わないなあって思って」


私の席の隣の神谷陸は、スマホを触っていたが私の視線に気づき口をだした。


「笑うってよく分かんねえから…」

「それって結構ヤバイよ。
小さい頃はどうだったの?」

「えっ…と、それは____」


その時、神谷くんの声を遮るように、私を呼ぶ声が飛び交った。

今は、休み時間なのだが、神谷くんは友達が少ないようで1人だった。

対象的に、私は女友達も男友達も多い。

自分で言うのもあれだがムードメーカー的な存在だと思っている。


「ごめん、行くね」


そう言うと、神谷くんは真剣な目でスマホを操作していた。

少し日本人離れして整った顔に、さらさらな髪。
少し崩して着る制服はとても似合っていて、友達が少ないなんて思えない容姿だった。


「有沙早くー」


また、私の名前を呼ぶ声がしてつられるようにかけていく。


「あいつと話してたの?」


輪の中の1人が、私に問う。

そうだよ、と答えると皆は神谷くんの話題で話し始める。


「神谷って、隠れイケメンじゃない?」

「分かるけど、話しにくい雰囲気」


私は、こういう話には混ざりにくい。

ただ、相槌をうったりして反応をみせた。


周りから見れば、私は友達関係不自由ないように見える。

けど、正直いうと自分に合った運命の友達がいない。

皆と、仲が悪いわけでもなく、良すぎるわけでもない。

微妙な場所にいる私。
どこかすっぽりとはまる輪を探している。


と、考えてるものの、なにも行動に起こせてないけれど。


空は、そんな私を表しているのか、曇天だった。

今にも雨が降りそうに真っ暗な空が広がっていた。

午後の授業が始まっても、頭がぼんやりとしかしなくて、勉強に集中できなかった。

もう、来年は大学受験なのに、なんとなくやっているから、これからもなんとなく生きていくんだ。
そう思った。