「ゆめ子はさー、ほんと優しいよねー」

「もう唯、そんな毎日遅れてばっかりだとさすがのゆめ子も怒っちゃうよ?」


「ゆめ子は許してくれるもんねー?」


ナギちゃんと唯ちゃんはいつも私の前を漕ぐ。

お決まりのポジショニング。

私はいつも、ひとり

「…うん、遅刻しなければオッケーオッケー」

指でオーケーサインを作って見せるけど、

振り向いてはくれない。

さすがゆめ子!って唯ちゃんは満足気。


そして唯ちゃんのお決まりのセリフは

「やっぱうちらサンコイチだもんなー」

ぎゃははと笑って

私のことなんてお構いなしに二人で飛ばして、

それを追う私。


そうだねーって私の声は風でかき消されて

ペダルの音とともに消えていくんだ。


あれ私、わらえてた?


髪の毛が上手い具合にカーテンとなって顔を隠した。


今この瞬間だけは


この長いくせっ気の髪が

ありがたく思えた。