社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編

次の健人の言葉で甘い雰囲気が一気に壊れた。



「花菜、引っ越しの準備だ。」


「今日?」


「明日の午後、花菜の実家へ行く。」


「明日の午後?そんなに急がなくても。」


「約束しただろ?プロジェクトが終わったらって。」


「そうだけど………。」



抱き締める腕が私から離れていった。振り返れば、健人がニヤリとした。



「逃げ道はないから。」


「わかってる。」


「ほら、少しでも片付ける。」


「はいはい。」



仕方なく引っ越しの準備を始める。健人も手際よく準備している。



「健人、嬉しそう。」


「当たり前だ。結婚に一歩進めるからな。」


「健人、そんなに結婚願望あった?」


「花菜が相手だからだ。早く子供も欲しいし。」


「早くない?」


「俺の歳を知ってるよな?」


「………私は25だけど?」


「若さアピールか?まあ、可愛い発言するし若いな。」


「………清水さんにも言われた。社長は気にしてないって。」


「清水は伊達に歳を重ねてないな。」



嬉しそうな社長に私もクスリと笑う。



「健人、本当に嬉しそう。」


「やっとだからな。」



二人の結婚が一歩近づいた気がした。