社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編

「だろうな。俺が電話を掛けたら驚かれた。」


「………忙しくて、つい………。」


「少し電話を掛けるだけだろ?俺には『親に紹介出来ないんだろ?』って言っときながら、花菜こそ俺を親に紹介したくないのか?」


「違う。」


「なら、何で親には伝えてない?俺は婚約者だよな?」



健人から視線を逸らした。直ぐに健人の手が私の頬を挟み、視線を強引に合わせる。



「花菜、逃げるな。」


「逃げてない。」


「もう逃げる部屋はなくなる。親にも挨拶をして結婚を進める。」



真剣な健人の声色に現実味が帯びてくる。



「花菜、俺と結婚するよな?」


「………うん、するよ。」


「なら、何でも話せ。俺に言いたい事は?」



健人の手が頬から離れていく。それでも健人の目から視線を逸らさない。



「花菜、俺に言いたい事は?」



優しい健人の声に一度目を閉じて、直ぐに閉じていた目を開いて健人を見つめる。