ふと時計に目を向ければ、22時を過ぎている。


お腹も空いてきて集中力が欠けてきた。


周りに視線を向ければ、残業をしている人達が数人目に入る。


目の前に座る長野さんは集中して仕事をしている。隣の清水さんは既にいない。



「長野さん、お腹が空きました。」


「…………誘ってるのか?」


「コンビニへ行きませんか?」


「………ちょっとだけ待って。キリが悪いから。」


「お腹が空きました。」


「長嶺、俺に甘えるな。」


「いいじゃないですか、先輩。」


「調子のいい奴。」


「ふふっ、可愛い後輩でしょ。」


「可愛……い………。」



視線を上げた長野さんの目が大きくなる。驚くように私の背後を見ている。


その時、机に落ちてくる郵便物にビクリと体が揺れ、勢いよく背後に振り返った。


不機嫌な社長が目に飛び込んできた。



「花菜、お腹が空いたのか?」



低い声の社長に息を呑み込んだ。