「前も見た光景。」


「えっ？」



長野さんのシラケた目に苦笑いした。



「喧嘩？10コも上の男と付き合っても喧嘩とかするんだな？」


「………喧嘩じゃないです。」


「じゃあ、逃げてる？10コも上の男とは口喧嘩も出来ないってヤツか。」


「………そんなんじゃありません。」


「長谷川さん、可哀想。逃げれば、また長谷川さんに迷惑を掛けるぞ。」


「…………。」



長野さんの言葉に反論出来ない。確かに長谷川さんに迷惑を掛けてる。



「前も逃げてたんじゃない？同じ光景を私も見たし。」


「清水さん………。」


「社長だし、随分と年上だけど、長嶺の婚約者。これからは家族でしょ。遠慮とか逃げてたら家族になれないと思うけど？」


「………逃げてなんて………。」


「なら遠慮？」


「違います。一緒に暮らすと見られたくない事とかあるんです。」


「長嶺は若いわね。そんな事は案外社長は気にしてないモノよ。」



清水さんが仕事に集中し始めた。それに釣られるように私も仕事を再開した。