健人さんが立ち上がる姿を目で追えば、私を肩に担ぎ上げた。


その行動に嫌な汗が流れる。



「健人さん?」



寝室に向かって歩く健人さんに声を掛けるが返事はない。


寝室のベッドに下ろされ、覆い被さる健人さんを見上げる。



「健人さん?」


「健人。花菜、健人だ。」


「…………。」


「呼ぶまで答えない。」



健人さんの唇が重なり、手が私の体を這い出した。



「花菜、呼べ。健人だ。」


「ん…………、けん……と………。」



唇が離れていく。



「健人、急にどうしたの?」



上がる息を整えながら健人さんを見上げる。



「俺より奥寺を選んだ花菜を思い出したから。2度としないように教え込む。」


「教え込む………って………。」


「俺より奥寺を選んだよな?」


「あれは………先の見えない未来に不安が押し寄せて………。健人さんとは離れるべきなのか迷ってて………。」