健人さんが頭をフル回転させて考え込んでいる。



「始めから健人さんの結婚相手なんていなかった。」


「…………。」


「いつまでも結婚しない健人さんを仕掛ける為だったのかも。」



私達を見る二人の顔は企みが成功したかのような笑みだった。



もしかしたら………始めから………。



健人さんを結婚させる為?



孫を見たい為?



「親父達が簡単に結婚を許した訳だ。」



大きな溜め息を漏らす健人さんを見上げる。



「早まった?」


「いや、逆に感謝してる。一歩踏み出せたから。」


「踏み出せた?」


「囚われてたのは俺だった。御曹司だから………跡継ぎの一人だから………って。」


「お父さん達、鬼ではなかったね?」


「天の邪鬼だったけど?」



再び抱き寄せられ、健人さんの肩に凭れ掛かった。



「花菜、今日から一緒に暮らすぞ。」



決定事項のように話す健人さんに頷くしかないと思った。