「そっか… やっぱり結城はまだ雪乃ちゃんのこと根に持ってたんだな… ただの片想いの癖に加瀬もいい迷惑だよな。しかも加瀬だって、もう別れてるのにさ…」

「あの…」

「ん?」

「中岡さんは、雪乃さんって方をご存じなんですか?」

私の知らない二人のことをもっと知りたいと思った。

「えっ… あー まあ、加瀬からも聞いてたし、実際にあいつの家で手料理もご馳走になったしね。とにかく可愛くて、性格も良くて、料理もうまくてさ、まさに理想の彼女って感じだったな… 加瀬も彼女のことが可愛くて仕方なかったみたいでさ、会う度惚気てたよ… もう、その溺愛ぶりがさ」

「あー! もう、いいです! いいです、その辺で」

やっぱり聞くんじゃなかった。
過去の話とはいえ、さすがにへこむ。

「そお? まあ、確かに加瀬がデレてる話なんてどうでもいいか… だけどね、そんな加瀬も別れた後は大変だったんだよ。もう荒れて荒れて… 見てられなかったな~」

「そんなに…ですか?」

「うん… あれはヤバかったな。多分、今でも引きずってると思うよ。もう、そういう話は一切しなくなっちゃったけどね… まあ、でも無理もないよなあ あんなに上手くいってたのに、ある日突然フランス行くから別れてくれなんて言われりゃね。加瀬は待つつもりで、プロポーズまでしたみたいだけど、結局、それも断られて…あいつフラれたんだよ」

「そうだったんですか…」

「って、俺、ちょっと喋り過ぎちゃったね… 加瀬には内緒でお願いします」

中岡さんが笑いながらそう言った。

そっか…
加瀬さんは、それほどまでに雪乃さんのことを愛していたんだ。

それなのに、この間はあんな言い方をして…

本当にもう過去にできているのだろうか?
それとも、私がそばで聞いていたから?

中岡さんの話を聞いて、すっかり自信を失ってしまった。

でも、
ダメダメ!

どんなことがあっても加瀬さんを信じるって決めたのだから…

“雪乃さんに負けないくらい、いい彼女になる”

今の私にはそれしかない。