レセプションパーティーの翌日、華々しくオープンを迎えたサクラガーデン。

雑誌やテレビの取材も殺到し、暫くの間、目が回るほどの忙しさだった。

他にも沢山仕事を抱えていた加瀬さんは、休みはおろか睡眠さえも取れない状況が続き…

とうとう、昨夜、高熱を出してダウンしてしまった。


「加瀬も無茶するタイプだからな~」

そう言って笑う彼は、加瀬さんの同期でピンチヒッターを名乗り出てくれた隣のチームの中岡さんだ。

今日は私と一緒に、車で担当先を回ってくれている。

「はい 加瀬さんは代休も取らず、私の仕事まで引き受けてくれて… 毎晩、遅くまで残業続きだったんです」

そう…
私の体ばかり心配して、本来私もやらなければいけない報告書や企画書まで、社に残ってやってくれていたのだ。

何度私が手伝うと言っても、大丈夫だの一点張りで…

「確かに坂口さんもいない上に、結城の担当先と合わせて倍になってる訳だから、そりゃ回らないよな。結局、結城の後任もいつになるか分からないみたいだし… でも、まあ、部長も、加瀬と高本さんに負担が集中しないように考えるって言ってたから、少しは改善されると思うよ」

「そうですか…」

「それにしても、結城も結城だよな… 辞めるのは知ってたけど、こんな急に辞めるなんてさ… 加瀬と喧嘩したからって噂もあるみたいだけどさ、最近、加瀬とも全然飲みに行けなくて、その辺の事情全く聞けてないんだよね 高本さん、何か知ってたりする?」

「えっと… それは…」

「あ やっぱ知ってるんだ?」

中岡さんが、パッと私の方を見た。

「まあ、知ってるというか…何というか」

言葉を濁す私に、中岡さんがこう言った。

「ねえ、それってさ、昔、加瀬が付き合ってたパティシエの彼女のことと関係あったりする?」

「えっ?」

雪乃さんのことだ。
そっか、中岡さんも知ってたんだ。

「って、違ったかあ…」

「いえ 違くないです!」

私は思わず、そう答えていた。