今日も彼の秘密をにぎり中。

「裁縫か……。」

家庭科が苦手なくせに家庭科部に所属しているわたし。
一年生の時に仲良くなって、成り行きでこの部活にしたけれど……めちゃくちゃ後悔している。

黒板に書かれている文字は「自己流スカート」一番苦手な分野だ。

「今週中に、布を裁って来週には作成に移りたいと思っています。」


無理に決まってんじゃん。そう思ってはいても口には出せない。出せるわけがない。

「えっ、無理なんだけど。布を裁つとか面倒すぎるでしょ。」

「同意〜。杏奈も苦手〜。」

「杏奈も?百合は?」

「わたしもムリー。ハサミなんて使わないし。」

「うちら三人とも苦手だからさ、真季、」

「え、うち?」

「家でやってきてくんない?」

「え、そんな。」

志乃だって何と無くは知ってるでしょ。裁縫苦手なこと。

「ほんっとお願い!」

「けど、」

「うちらそんなやったことなくってさ、庶民の真季ならできるでしょ?」

………。

「しょ、庶民?」

「え?わたし変なこと言った?そんなことより、ほんっとにお願い!」

「ちょ、無理だよ!」

気づくと家庭科室から逃げ出して屋上へと向かっていた。