あれから、何年経っただろう。 クリーニングの柔らかく薄いビニールのかけられたコートを眺め、独りぼんやり考える。 私たちはそのまま同じ道を歩むことなく、中学を卒業した。 互いの気持ちについて何も言わなかったし、互いに聞くこともなかった。 ただ、卒業式にくれたボタンは、今も大事に持っている。