「車掌に注意されるとか、ありえないね」

「だよね。遠慮してたら30分待たなきゃいけないんだもん、これくらい見逃してくれたらいいのに」

「融通がきかない、頭かたい人なんだろうね」


 暗い電車の窓に映る2人の半透明な虚像も、楽しそうに笑っている。

 乗客は皆疲れた顔をしていて、目を開いている人の方が少ない。