「……せさん?」


 足が、自然と止まる。


 空耳かと思った。

 こんなところで好きな人の声が聞こえるなんて、重症だ。


 階上のクラスも授業が終わったらしく、沢山の生徒が階段を下りている。

 知った顔は、ない。


 ……空耳か。

 頭、重症すぎ。

 そう思って、階段の前を通り過ぎた。