Even if ...【短編小説】

当時は先生からの返事も全く聞けず、モヤモヤとした形のまま鉛となって心の奥に残っていた。

しかし今それが全て排出できた。

私は身支度をして椅子から降り、
バッグを右肩にかける。



「八嶋先生、過去の恋に諦めがついた者同士、
全く新しいところで幸せになりましょ。」

「そうだな。瀬上さんはまだ27だからきっといい出会いがあるよ、グッドラック。」



先生は私が机の上に置いた樋口さん1枚を
私の左手の中に押し込める。

優しくて、でもどこか悲しげな笑顔を私に見せる。



「はい。」



私も負けじと笑顔を作り、出入口に向かった。


唇を噛み締め、瞬きを我慢しながら─────





【Fin.】