掃除道具を片付けたら、もうお昼の時間だった。さて、どうしようか、と思っていると、伊織君が椅子に座って手をヒラヒラさせている。
「・・・どうしましたか?」
首を傾げると、彼はにっこりと笑った。いつもの大きな笑顔で。髪の毛が短くなって、前よりそれは大人っぽく見える。私は一瞬ハッとした。
「色々凪子さんにしてもらってばかりだから、お昼は俺にご馳走させてよ。ピザでも取らない?前、台所の引き出しで見つけたんだよね、配達のチラシ」
・・・おおー!私は嬉しくなって手を叩く。やったー!善意の労働にご褒美がきたー!
「いいの?やった。じゃあ何にしようか」
いそいそとチラシを出し、額をつき合わせてメニューを決める。伊織君が電話してくれて、魔法のカードで支払いをしてくれた。
彼が怪我をしてから、私が用意するご飯にはお金がかかってるよねって食費を払ってはくれているのだ。私はこんな時くらいだしいいよ、と断るけれど、伊織君はそういうとき、とても強い目をして私を見てくるので、最後には受け取る羽目になっている。だけどこういう好意は有難く受け取ろう!
昼時にも関わらず店は空いていたようで、案外すぐにピザは届く。
私達はワイドショーを観ながら、それにいちいち突っ込みつつ、美味しく熱々のピザを食べる。ふんわりしていて、何てことなくて、そして明るい幸せな午後だった。



