正直言えば、ガックリした。
だけど仕方ないことではある。大体この家の家賃や水道光熱費を払っているのは彼なのだ。そして私は出て行くところもない。そして彼は―――――――現在、普通の生活すらも不自由なはずだ。
出来るだけ暗い声にならないように注意して、私は言った。
「大丈夫だよ。とりあえず君が立てるようになるまでは、朝と夜は私がご飯作るようにするね」
「本当申し訳ないです。でもありがとう、凪子さん。これで一人暮らしだったら大変なことになるところだった。スタジオの狭いソファーに泊まりこんで、アシさん達の世話にならないといけないところだ」
彼は自分でそう言って、想像したらしい。うわあ~!と嫌そうに叫んだ。
私は立ち上がって伊織君のお茶をコップに注ぎ、彼へと渡す。
「足、どのくらいかかりそうなの?」
「医者いわく、2週間くらいだろうって。まあ熱と痛みが引いても完治ではないらしいから、しばらくは出張の仕事はしないようにって言われてるけど。でも通院の必要はなくて、とにかくじっとしとけって」
暇なのが嫌いなのだろう。彼は、一体何をしたらいいんだ~とぶつぶつ言っていた。私もため息をつく。どうやら2週間ほど、私は臨時の介護職にならなけりゃいけないようだ、と思って。
その夜からが、大変だった。
食事や洗面は両手が使えるから問題なかったし、今晩は温めたらダメだからとお風呂もやめたものの、そういえば、個人の部屋は二階だ、と二人が気がついたのが寝る前だったからだ。



