長い夜には手をとって



 うんうんと頷く菊池さんを見ていると、心の隅っこに不安が広がってきたのが判った。

 ・・・・・そうだよね、私、よく考えたら、来月からもう困るじゃん。

 今の一軒家の家賃は、綾と折半していたのだ。築52年の古い家で人が住まないと更に傷むから、という理由で都会に住むオーナーさんが格安で貸してくれている賃貸物件とはいえ、それでも一人で支払うとなると結構な重荷だ。一人4万5千円、それに光熱費を足してそれぞれが6万づつ。毎月それを出して、二人で暮らしていたのだ。

 派遣で働く私には余裕なお金なんてない。時給1300円で働く上に今の会社は残業が一切ないのだ。つまり、一月に稼げる金額は決まっている。

 ・・・ガーン!!!

 目が覚めたようだった。

 そうだ。来月分くらいは払えるって思ってたけど、その前に確かクレジットカードの引き落としがあったんじゃない!?それに水道代の引き落としも・・・。あらら?お金、足りるのかな。

 怒りとか、寂しさとか、そんなものはとりあえず後回しにしなきゃならないんじゃないっ!?私は食欲がなくなって、ランチプレートをぐいっと押しやった。心配そうに見詰める菊池さんの視線も鬱陶しくて、席を立つ。

「ちょっと行くところあるから、ごめんね」

 そう言い捨てると私はダッシュで食堂を後にした。

 今、自分の口座にいくらあるのかを確かめたかったのだ。あと10日ほどでくるはずの家賃の引き落とし。その前にクレジット代が落ちてしまう。綾がいなくたってあの貯金があれば、当分は凌げたはずだ。だけどそれはもうないし、よく考えたら今の家からの引越し資金すらないってことなのだ!