警察には失踪として連絡していて、ある程度の足跡は辿る努力をしてくれたようだけど、結局よくわかりません、てな結果が報告されていたのだ。書置きがあったことから事件に巻き込まれたとは思えない、とかで。

 でもとにかく、インドだろうが、綾は元気でいるらしい。

 ああ良かった。

 私はしばらく放心して座り込んだままだったけれど、携帯が鞄の中でぶるぶる音を立てているのに気がついて、玄関先に放り出していた鞄を取りに行く。

 何だ何だ?今度は何だ?

 そんなことを思いながら、携帯の画面を見る。―――――――おや?

「はいー?もしもしー?」

 通話ボタンを押して言った。携帯の画面にかかれていたのは水谷伊織の文字。伊織君が電話なんて、あの忘れ物の時以来だ。

 すると向こう側ではガサガサと通信状態の悪そうなノイズが。その後、やりますから、と女の人の声が聞こえてきた。

「んー?もしもーし、伊織君ー?」

 ちょっと、そっちからかけてきといて無視しないでよ、そう思いつつ私が再度呼びかけると、もしもし、と女の人の声。

『すみません、水谷さんのハウスメイトの方ですよね?私はスタジオ阿相の学生アシスタントの三上です』

 へ?私は首を捻りながら、そうですが、と返す。学生アシさんが、一体何の用だ?そして伊織君はどこに行った?

『あの、今日水谷さん、撮影で怪我をしまして』

「――――――えっ!?怪我?」

 驚いてつい叫んでしまった。相手の女の子はちょっと早口で喋り続ける。