2月に入ったその日、郵便受けにポストカードが届いた。

 郵便葉書よりちょっと大きいカード。裏面は更紗を着たインドの少女が花畑で遊んでいるような風景で、表面はブルーインクの細い文字。

『塚村凪子様』

 綾からだった。

「・・・あ」

 私はそれを他のチラシや情報紙なんかと一緒に掴み、急いで玄関を開ける。通勤に使っているパンプスを脱ぎ捨てて居間に駆け込み、電気をつけてポストカードを取り上げた。

『ハロー。凪は怒りながらも心配してくれてるのじゃないかと思って。とりあえず落ち着いたので、これを書くね。私は元気です。お金を返しに、必ず帰ります。綾』

 AIR MAILの隣にはINDIAの文字。

 ・・・綾ったら・・・インドにいるんだ・・・。何してるのよ、そこで一体・・・。

 私は居間の床にそのまま座り込んで、しばらくじいっとしていた。暖房をつけてない木造の家はしんしんと冷え込み、その内寒気がしてようやくノロノロとエアコンをつける。

 多分、というか、これはもう絶対、彼氏といるんだろう。そしてとりあえず、無事のようだった。

 筆跡は間違いなく綾だ。彼氏といなくなったのだからインドにいるかもしれない、とは思っていたのだ。綾たちの店の店長さんもそう言ってたし。だけど何が起こったのか判らないし、もしかしたら綾は怪我をしてたりするのかも、もっと悪ければ監禁されてたり、殺されてたりするのかも、と思っていた。

 はあ~・・・と大きなため息をついた。ようやく安心できた、そう思ったのだ。