「何してんの、ちょっと~っ!」
「ナギ。あのさ、今、付き合ってる男が誰もいないんだったら、もう一度俺達付き合わないか?」
「はっ!?」
「俺、前よりマシな男になったよ。今度はちゃんと大事にするから」
「いやいやいやいや、ちょっと、とりあえず離して~っ!」
腕の中で無理やり方向転換すると、弘平はするっと腕を外した。だけど冷蔵庫に背をつけて立つ私と更に距離を縮めて見下ろし、真面目な声で言った。
「お前みたいな子が、俺には必要なんだ」
「そそそそんなことないと思うよ!?」
声が裏返ってしまった。
両手を私が張り付いている冷蔵庫において、彼は私を閉じ込める。近づいてくる弘平の顔。彼の髪からはシャンプーと冬の空気の匂い。綺麗な形の目が私を見ている。うわ、わ―――――――!
寸前で、私は顔をそむけて、無理やりその場にしゃがみこんだ。
「――――――おい、ナギ」
上からがっかりしたような弘平の声が降ってくる。
「だめ、ダメだってば・・・」
驚きのあまり力が入らなかったけれど、私は何とか弘平をぐいっと押してそこを這い出し、匍匐前進でその場から逃げ出す。バタバタとはいずってソファーにしがみつき、ヤツを振り返った。
「わ、わ、私達はもう終わったでしょ!ちょっと落ち着いて~!」
「俺は落ち着いてんだけど。そんで、また始めたいと思ってお前を口説いてんだけど」



