「そう」
「どこに!?」
「それが判れば苦労しないの。何と彼女、私の箪笥貯金を持ち逃げしたからね」
「ええーっ!?」
また菊池さんが叫んだ。周囲のテーブルで食べている人達が、ちらちらと視線を投げかけてくるのがわかった。だけどこれはそりゃ驚くでしょ。私はもうどうでもいい気持ちだったので、ランチプレートから春巻きをとって口に突っ込んだ。
「それって大変じゃなーい!警察には連絡したの?」
「勤め先のインド料理屋の店長がしたって言ってた。何と売り上げも持ち逃げされたらしくて」
「あらー!」
菊池さんは目をまんまるく開けて私を凝視している。いつもなら昼食中はそろそろ結婚が近いはずの彼氏の話をガンガンしてくるのだけれど、流石に今日はそんな気はなくなったらしい。
「本当まさかの出来事だね!何で蒸発なんだろう?例えばお金が困ってたとしても普通に色々あるじゃない?借りるとかさ、ローン組むとか。日本なんだから」
「そうよね~・・・。とにかく、人の貯金盗む前に相談して欲しかったな。必要なことなら、私だって貸したのに」
「そうだよね!でもえっと・・・じゃあ塚村さん大変じゃない!?お金って大丈夫なの?盗まれちゃって、生活は出来る?」
「あ、それは大丈夫。持ち逃げされたのは貯金分だけで、給料口座に1ヶ月分くらいはあるから。でもだからね・・・ガックリ来ちゃって。色々と。これからのことも不安だし」
「そりゃそうだよねえ~・・・あらら~。ほんと大変じゃない。家賃だって二人分払わなきゃならなくなるのよね?そりゃあ茫然自失も当然よね」



