「ああ、塚村さんに加納だ。久しぶりだな」
おお、私のことを覚えてくれている!そのことに嬉しくなって、私はウキウキと津田さんへ近寄る。
「津田FP!・・・じゃもうないのか。わーい、覚えてて下さったんですね、役立たずの派遣のことを!」
そう言うと、津田さんはあはははと軽く笑った。・・・やっぱりかなり柔らかくなってるよね。前は、かなり冗談を言ってもにこっともしない人だったのに。
質がいいものだと一目で判る黒いジャケットに、ノーネクタイで白シャツの前をあけてさらっと着ている。随所に余裕が溢れていて、大人の男性だった。
「塚村さんは役立たずじゃなかったよ。しっかり仕事をしてくれてた。今日もわざわざ来てくれたのか、有難う」
おお、何て優しい言葉を!嬉しいぞ!私はテンションを上げながら言う。
「いえいえ!津田さんが独立するって聞いたから、もう是非と思って。おめでとうございます!一国一城の主ですね~!」
「そんな大したものじゃないんだけどね。でも小さくても自分の名前の事務所もつってなったら、やっぱり背筋が伸びるよね」
以前より男っぷりが上がっている津田さんが、そう言って微笑む。うーん、いい男だ!以前のクールビューティーだって素敵だったけれど、やはり外見のよろしい男性が微笑むのはもっといい。その奥さんを一目見てみたかったなあ~。それぞれが素晴らしいなら、その二人が並んだら一体どうなるのだ!
「おめでとうございます。流石ですね」
弘平が隣からそう言った。浮かべている笑顔は女性に見せるやんちゃなものではなく、憧れの先輩に見せるそれだ。



