すると伊織君は若干引きつった顔で頷く。
「・・・うん。今度は俺、飲む量セーブするよ。あの人に引き摺られないようにしなきゃ、今度こそ死にそうだし」
「皆でご飯行こうよ。私もジャムルを紹介したいしさ」
綾がそう言って、皆頷いた。
きっと東さんは両手一杯にお土産を抱えてくるはずだ。
今までずっと、そうだったみたいに。
人生は、藍の海を泳ぐようだ。
私はいつもそう思っていた。
悲しいことがあった時にはちょっとした黒が足されて深くて濃い群青色に。そして嬉しいことや楽しいことがあった時には白が足されて、綺麗な水色に。
そうやって、ゆらゆらと波と戯れながら泳いでいるんだって。底に近づいたり、水面に近づいたり、時には海溝を覗いたりしながら。
今の私は一人じゃない。
もう誰かを想って夜に一人でクッションを抱きしめることはないし、ふとした不安や孤独に襲われることもない。
いつもそばには伊織君がいて、笑ってくれるのだ。手を差し出して握り、温めてくれる。
それに綾も。
小さな香織ちゃんも。
私は安心して前に向かっていける。
自分のペースで、泳いでいける。



